【後編】切り開いていく農業に~兄弟の絆で農業の六次産業化・多角経営に挑む~

栄吾さんの後編スタート!!
前編でお伝えしていたある方というのは栄吾さんの弟、栄緒(まお)さんです。

いつも取材に行く時に画用紙に言葉を書いてもらって写真を撮らせてもらうのですが、
今回は栄緒さんが書いてくれました。

【人身受け難し今すでに受く、仏法聞き難し今すでに聞く】

「にんじんうけがたし…」って栄緒さんが言っていたので、にんじんって野菜のニンジン?!って思っていました。私あほなので。苦笑
たぶんそう思っているやろうなーと栄緒さんも思っていたようです。

栄吾さん

にんじんというのは人の命のことで、法事とかでお坊さんがおっしゃる文言でありがたい話があるんですよ。
その一番最初にこの言葉から話が始まります。

人として生まれるのはすごく難しいかもしれない。木とか虫とかそういう生き物にもしかしたら生まれていたかもしれない。
でもあなたは人として生まれていますよね?
だからちゃんとしなあきませんよっていう内容で、ありがたいものに囲まれているんやでという話なんです。

栄緒さん

それに気づいたのがめっちゃ前っていうのがすごいんですよ!
今やったら哲学的なことを言えるじゃないですか?
それを「僕生きてる!!」ってその時代に気付いた教祖がすごいなって僕らはいつも言ってるんですよ。
ただ、押し売りじゃないですよ!笑

なるほど…。

栄吾さん

ありがたいよねーって思っていないとあかんよねって。
農業をやりたいけどやれへん人もいるわけじゃないですか?
それこそ新規就農でどうしたらいいか分からへんし、売り上げも立たへんっていう人もいるなかで、僕らは親父が積み上げてきてくれたものを継ぐというのを見越してやっているので、それもすごくありがたいことだなと。

うちのお米が美味しいと言って買ってくださるお客様も、親父が30年ぐらい前からどんどん積み上げてきてくれた財産です。
僕が農業をやりだしてすぐにそう言ってもらえるのは、常日頃思っています。

栄緒さん

やっぱり商売させてもらってるっていうスタンスでやってますし、
これが榮農場のCSRです!

…CSR??苦笑

栄吾さん

また調べといてください。笑

【CSRとは】
企業が利益を追求するだけでなく、組織活動が社会へ与える影響に責任をもち、あらゆるステークホルダー(利害関係者:消費者、投資家等、及び社会全体)からの要求に対して適切な意思決定をする責任を指す。

せっかくなので栄緒さんにもお話を聞かせていただきました!

アメリカと日本の農業に対する意識の違い

栄緒さん

アメリカ行ってすぐは座学で英語と農業の基礎知識を学んだんですよ。
そこは日本中から50人集まるんですけど1人か2人1組でアメリカ全土の農場に振り分けられるんですよ。

東海岸ニューヨーク付近のニューハンプシャとかハワイに行った人もいますし、
メキシコの国境付近に行った人もいました。

僕が行ったのはワシントン州という所で農業州の1つなんですよ。
カリフォルニアって結構農業が有名じゃないですか。
アイダホポテトとか…。ワシントン州がじゃがいもの生産量1番で、りんごの生産量も1番なんですよ。
アメリカで1番っていう事は世界で1番っていうことになりますよね。

そんなところで農業をさせてもらって、僕が行ったところはでっかい規模じゃなくて、
めちゃくちゃ農業が盛んな所で桃にこだわって作っているところでした。
日本よりのやりかたというか、1つの作物に丹精込めて作るっていうやり方で、
想像していたアメリカのTHE農業!ではないなと思って、
それを日本に当てはめたときに、いろんなことを思ったんですけどあまり日本との差はないなとか…。

何を学んだかと言われると農業の産業としての位置づけが高いことにびっくりしまして、
いろんな機械も乗せてもらいましたし、メキシコ人のワーカーと一緒に働いていろんなモノを見せてもらったんですけど、一般市民の『農業に対する意識』『自分が口に入れる食べ物への意識』というのがすごく高いことに驚きました。

日本でいうと野菜だけを食べるベジタリアンってそんなに多くないでしょ?
欧米はベジタリアンの人口も多くてレストランとかに行ったら、ベジタリアンの人に向けたメニューがあるんですよ!
大手のチェーン店とかも絶対にありますし、豆で作ったハンバーガーとか絶対においてあるんですよね。

だから食べ物に対する意識が高いってことは、その分農業に関心を持っている人も多くて、
日本でいう読売新聞とかの1面に農業分野が載っていたりとかざらにあったんすよ。
そういう部分が国策としての、農業の位置づけが高いなと思いました。

僕は大学を卒業して行ったんですけど、その部分では全然及ばないと思いまして、
小学校、中学校、高校、大学というようにカリキュラムがあるじゃないですか?
でもその中に農業って全然入ってこないですよね。

年に1回農業体験とかある事はあるけど、やっぱり親の目から離れてたらコンビニのご飯を食べていても分からへんし、スーパーに行けばお惣菜も売ってるし口に入れるモノに対する警戒心というのが日本人は薄いなと思いました。

それがアメリカと日本の1番の違いじゃないかな?

アメリカで農業をしてきたことは今もプラスになってますし、下地にもなってますけど枝の切り方とかそんなんは農家のプロからしたら当たり前な部分であって、売り先とかは経営の部分なんですけど根本的に農家を取り巻く環境が違うなと思いました。

栄吾さん

農業のことはアメリカに行ってまで勉強することではなかったけど、
アメリカに行って意識の違いが分かって良かったってことですね。

栄緒さん

そうです!長くなりましたがそうです!笑
着地点がありました。苦笑
日本式の農業はやっぱり日本で学んだ方がいいですし、でもアメリカに行くことで見えてくることもあります。

農業の意識の違いや在り方が日本とアメリカでは違ったということですよね。

これからの農業と榮農場の農業

栄緒さん

公務員も目指していたんですけど1回落ちたときに、勉強もそんなに身に入ってなくてなんかやりたい事が違うなと思いまして、アメリカの農業研修も別にやりたい事ではなかったんですけど、プラスになればいいかな?くらいの気持ちでしたね。

これから農業をするから行っておこうとかじゃなくて?

栄緒さん

じゃなくて、しないであったとしても英語も喋れるようになるやろうし!

経験としてってことですか?

栄緒さん

そうです、そうです!
見分を広げるというか、そんな感じで行きました。
でもやっていることがおもしろかったんですよ!

今言ってた意識の問題はちょっと置いておいて、農業の作業自体がおもしろいなと思って、
自分が作った野菜とかを食べてもらって「おいしい」と言ってもらえるのが良かったです。

僕だけが思っていることなんですけど、食卓を全部榮農場にしたいなと思っていて、
おかずの野菜も榮農場で、もちろんお米も榮農場で、食後のデザートはいちじくだとかそういうのをやりたいなと思っています。

今後そういうことをして1人のお客さんとお米だけで繋がるんじゃなくて、もっと深く深く1人を掘り下げることで広告塔じゃないですけど、他の人に口コミっていう流れを。
それは元から親父から言っていることで、口コミで広げるというのは、
信頼がある人からの口コミは広がりやすいということなので、それを広げていきたいなと思っています。

消費者の方の食卓を全部は言い過ぎですけど、お肉がないですし…。
でもそういう深い繋がりをもっていきたいですね。

大量生産・大量消費の時代についていこうと思ったら、それこそTPPもあるのでやっていけないですし、1人1人のお客さんを大事にしていきたいなーと思いますね。

栄吾さんは?栄緒さんとはちょっと違いますか?

栄吾さん

規模をデカくして儲けたいとかそういう気持ちははないことはないんですけど、
やっぱり喜んでいただけるものを作って行きたいわけですし、
実際よく田舎のおじいさんとか昔からの百姓が言うのは「作るだけでいい」っていうのは、
分からなくはないんですけどやっぱり今後は販売もついてまわるのかなと。

今の作って当たり前っていうのは当たり前なんですけど、それをどうやって売って行くかという所と、生産・直売っていうのをうちも大事にしているのでもうちょっと販売の方にも力を入れてやってもいいのかなと思います。

僕自身あまり働くのは好きじゃないので不労所得が1番ありがたいです…。笑

栄緒さん

本当はね?笑
僕の個人的な夢があって、栗東っていちじくの生産地なんですよ。
それのいちじく生産部会っていうのが平均年齢75歳くらいなんですよ。
僕が入っても70ちょいくらい…。
すごい年齢層が高くて今年で発足して30年なんですけど、
かなり生産者も生産量も減ったんで、いちじくの生産を続けていきたいというのは思ってますね。

実際に農業をやってみて

栄緒さん

僕いつも思うんですけど、農業って1年に1回しかチャンスがないんですよ。
1つの作物をするってなると、お米なら1回限りですし、
ほうれん草とかこまつなっていうのは年に何回かサイクルを回せるんですよ。

うちは路地で露地で種を蒔いて育てて半年後に収穫して売るっていうのが1年に1回しかないですし、親父が30年40年してきてくれていても、まだ40回しかしてないんですよ。

それがずっと昔から続いてきて、これから先も続けていくことが大事なのかなと思っていて、1年に1回しかチャンスはないし、改善もすごく難しいんですけど1年に1回しかないチャンスを活かしながら続けて行くことが大事ですよね。

切り開いていく農業に…

栄緒さん

農業大学の授業が悪いとかではないんですけど、
カリキュラムを見たことがあって、農薬の使い方とか化学肥料の使い方しか教えなくて、
あとの経営の部分とか販路っていうのは自分で探してねっていう感じで伸びしろを試しているというのか、放任主義というか…。

そういうことしか教えてくれないので、農業を志すなら別に行かなくてもいいんじゃないかなって思っています。
この立場から言わせてもらうと軽いんですけど、みんな農業やればいいのになって思っています。

土地を借りるのに借金したとしても何年後かにぺいできますし、贅沢しなければ生活もちゃんとできます。

自分が食べるものを作ってほしいなと思いますし、農業を仕事にするにしても僕は最初に収穫したものを食べるのは自分だと思っていて、その気持ちでやらないとものも売れないですし、いいものも作れないと思っています。

栄吾さん

これは出来が悪いから農協、市場に出したれっていう感じではダメやと思います。

栄緒さん

実際に自分が作ったものが販売されていて自分がお金を払って買うのか…。
買う物を作れば売れますしね。

あとはアメリカに行けばいいと思いますよ!簡単に行けるんで!笑
僕は親に渡航費みたいなんは出してもらったんですけど、親の援助とかがない人は働いて返していましたよ。
アメリカで働いて給料から引かれていくというかたちで。

そういうこともできますし、一応日本代表として行っているんでちゃんとした人じゃないと面接で落とされる場合もあるんですけど、行けば何か分かると思いますよ!
自分の限界とか自分のやりたいことが。

僕が行ったプログラムは30歳までしか行けないけど、ヨーロッパに行くプログラムもありますし、何の媒体でもいいんですけど日本じゃない所に行くのはおすすめです。

農業・漁業とかをするなら、もっと広い視野で他の所から日本を見たほうがいいです。
で、日本と自分が見た国の農業を比べたときにいろいろ見えてくると思いますよ!

農業大学校とかに行ってたら日本の農業しか見えてこないんですよね。
今までのエスカレートというか農業教育のカリキュラムが変わらないので、
「農大出たけど…何しよう…」みたいになっちゃうんで。

そうじゃなくて、自分で切り開く農業をできるんじゃないかなと思います。

栄吾さん

あんまり卑屈にならずに、農業をしたいけどやれないっていうならもう少し見方を変えてみると、違うアプローチもあるかと思うんで。

農業って開かれた分野ではないと思うんで、結構閉ざされたもんやとは思うんですけどシャットアウトした鎖国でもないはずなんで、市役所に行っても土地が見つからないとかっていうのは対応した人が悪いくらいだと思うんで。

実際に借り手を探している方もおられるようですし、選り好みしなければいくらでも田んぼはあると思います。

1回物は試しっていうくらいでやってみてもいいんじゃないかな。
完全に恵まれている立場の僕らが言うのもあれなんですけど、ありがたいなって気持ちを持ってね。

それがさっきのお坊さんが話してくれるありがたい話に繋がるんです。

ABOUTこの記事をかいた人

まみ

農業と人を結ぶ活動をしています。 こう見えて8歳の女の子のママです(゚Д゚)ノ 「見えなーい!」と言われますが母親やっています!笑 元々野菜がすごく嫌いやったけど、 農家さんが言う【本当の味】というのを知ってからは、 野菜がモリモリ食べられるようになりました!! 皆さんにも伝えて行けるように日々頑張っております('◇')ゞ